海外駐在におけるマインドセット ~Alco President~

自己紹介分 :20代の法務知財担当サラリーマンです。国立大学修士課程修了後、グローバルメーカーへ入社し、知財業務に従事し、20代で米国駐在。本サイトでは、海外駐在員になるためのノウハウ、また日々学んだことを紹介していきます。

弁理士 短答 R2 特 19

【特許・実用新案】19
特許法に規定する実施権等に関し、次の(イ)~(ホ)のうち、正しいものは、いくつあるか。


(イ) 専用実施権についての通常実施権を実施の事業とともに第三者に譲渡する場合、特許権者の承諾を得る必要はないが、専用実施権者の承諾を得なければならない。

※※※※※※※※※

→不正解:特許法94条第1項より。専用実施権者の承諾が必要な明記が無く、不正解

 通常実施権は原則として特許権者等の承諾を得なければ移転することができない。これは、発明というものの特性から誰が通常実施権者であるかは特許権者等の利害関係に
影響するところきわめて大きいということに基づく。しかし、実施の事業とともに移転する場合及び一般承継の場合はその例外を認めた。

 実施の事業とともに移転する場合及び一般承継の場合はその例外を認めた。その理由は事業とともにする場合も承諾を要するものとすると、その承諾を得ることができない場合において、しかも事業は移転せざるを得ないときは、事業を移転しても設備を稼働することができないため、設備の荒廃をきたすことになるので、このような事態を防ごうとするものである。

※※※※※※※※※


(ロ) 専用実施権者は、その専用実施権を放棄する場合、専用実施権についての通常実施権者があるときは、その者の承諾を得なければならないが、特許権者の承諾を得る必要はない。

※※※※※※※※※

→正解:特許法97条第2項より。

 本来、特許権の放棄は自己の利益放棄するものであるから、その権利者の自由にまかされるべき行為であるが、その権利について質権、専用実施権等が設定されている場合はその放棄によって不利益を蒙るのは単に特許権者にとどまらないので、これらの場合には、その放棄に制限を加えたものである。その放棄について承諾を要するものとしては質権者、専用実施権者のほかには職務発明に基づく通常実施権者、専用実施権者の許諾に基づく通常実施権者及び特許権者の許諾に基づく通常実施権者に限定し、その他の通常実施権者についてなんら承諾を要するものとしていないのであるが、これは通常実施権の発生原因の相違に着目したものである。なお、本条の規定による特許権の放棄は、一八五条に規定するように、特許請求の範囲が二以上の請求項に係る特許権について、請求項ごとにすることができる。
 二項は、専用実施権の放棄について規定したものであり、質権者又は七七条四項の規定による通常実施権者の承諾を得れば常に放棄することができるわけである。

※※※※※※※※※

 
(ハ) 通常実施権者が、通常実施権を目的として質権を設定したときは、質権者は、契約で別段の定をした場合を除き、当該特許発明の実施をすることができない。

※※※※※※※※※

→正解:特許法95条より。

 本条は、特許権等を目的として質権を設定した場合の当該特許発明の実施の権能の帰属について規定したものである。旧法の下において特許権等を目的として質権が設定された場合に、その特許発明を実施する権能は設定者が有するか質権者が有するかについては学説は分かれた。ある説は民法二九七条、二九八条の留置権に関する規定を準用して質権設定者の承諾がある場合に限り質権者は実施の権能を有し、承諾なきときは抵当権に類似する性質を有し、質権者は実施し得ないとする。また他の説においては民法三五六条の不動産質に関する規定を準用して質権者のみがその特許発明を実施する権能を有するとする。学説上の問題は別として実際上の問題としては特許発明の実施が通常相当の設備を必要とすることや技術の熟練を伴わなければならない場合の多いことを考えると、質権者が実施の権能を有するという制度よりも質権設定者が実施の権能を有する制度の方がのぞましいのである。本条はそのような趣旨から設けられた規定である。
もっとも質権設定者が実施の権能を有し、質権者が実施の権能を有しないというのは契約でなんらの定めもしなかった場合のことであって、契約をもって別段の定めをすればそれが有効であることはいうまでもない。「契約で別段の定をした場合を除き」としたゆえんである。

※※※※※※※※※


(ニ) 通常実施権を目的とする質権の設定は、登録しなければ、その効力を生じない。

※※※※※※※※※

→不正解:特許法97条第1項3号より。通実は登録が不要

 本条は、特許権の移転等については登録をもってその効力の発生要件とする旨を規定したものである。旧法においては本条に規定するような事項については登録をもって第三者対抗要件としていたのであるが、権利関係を明確にする意味においてこのように改めた。権利の移転等について登録をもって効力発生要件とする立法例としては鉱業法がある。登録をもって効力発生の要件とするという本条の規定は、移転等については登録されればいかなる場合でもその効力が生ずるというものではない。登録によって効力が生ずるための前提として実質的な要件を満たしているものでなければならない。たとえば、甲から乙に対して特許権の移転がされたということについての契約その他の法律行為は全くないにもかかわらず、偽造の譲渡証等を添付した登録申請により移転の登録があったとしても、その登録によっては特許権の移転の効力が生ずるものではない。本条が「登録をすれば、効力を生ずる」としないで「登録をしなければ、効力を生じない」とした理由もここにあるわけである。実質的な要件が欠けていても登録という外形的なものに表示された法律関係を信頼して取引等の行為をした者を保護しようというのは、登録をもって効力発生の要件とするかどうかの問題ではなく、登録の公信力の問題であり、公信力は我が国においては登録制度のみならず、登記制度においても認められていないところである。
一項各号において、移転については相続その他の一般承継の場合を除外しているのは三四条の特許を受ける権利の承継の場合と同じように相続等の事実の発生した時点から移転の登録がされるまでの間は権利者が存在しないという事態の生ずることを防ぐためのものである。したがって、相続その他の一般承継の場合は登録をしなくても移転の効力が生ずることになる。ただ、相続その他の一般承継の場合は二項の規定により、その旨を届け出なければならないことになっており、その届出前に特許庁から被相続人宛に手続をしたとしても、相続人は自己に対してされるべきであったという理由でその手続の無効を主張することはできないものと解される。
※※※※※※※※※


(ホ) 特許権者甲が、特許法第 92 条に基づき、自己の特許権Aに係る特許発明の実施をす
るための通常実施権の設定の裁定により、乙の特許権Bの通常実施権の設定を受けて、
特許権Aに係る特許発明の実施の事業を行った。甲の特許権Aが、特許権Aに係る特許
発明の実施の事業と分離して丙に移転する場合は、特許権Bについての甲の通常実施権
も丙に移転する。

※※※※※※※※※

→不正解:特許法94条第1項より。該当する権利(92条)は除くの部分で除外されておりため、移転することができない。
※※※※※※※※※


1 1つ
2 2つ ⇨よって2が正解
3 3つ
4 4つ
5 5つ

 

解答の説明は以下逐条解説より引用

https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/kaisetu/kogyoshoyu/document/chikujokaisetsu21/tokkyo.pdf