海外駐在におけるマインドセット ~Alco President~

自己紹介分 :20代の法務知財担当サラリーマンです。国立大学修士課程修了後、グローバルメーカーへ入社し、知財業務に従事し、20代で米国駐在。本サイトでは、海外駐在員になるためのノウハウ、また日々学んだことを紹介していきます。

弁理士 短答 R2 意匠 3

 

【意匠】3
意匠法第3条第1項各号(新規性)及び意匠法第4条(意匠の新規性の喪失の例外)に関し、次のうち、正しいものは、どれか。
ただし、各設問で言及した規定の該当性のみを判断し、他の登録要件は考慮しないこととする。また、特に文中に記載した場合を除き、意匠登録出願は、いかなる優先権の主張も伴わず、秘密意匠に係るものでも、分割又は変更に係るものでも、補正後の意匠についての新出願でも、冒認の出願でもなく、かつ、放棄、取下げ又は却下されておらず、査定又は審決が確定しておらず、いかなる補正もされていないものとし、また、名義変更、秘密にする期間の変更は行わないものとし、ハーグ協定のジュネーブ改正協定に基づく特例を考慮しないものとする。

1 甲は、意匠イを自ら創作した後に意匠ロを自ら創作し、意匠ロのみ公開した。意匠イと意匠ロは類似するものであった。その後、甲は、意匠イに係る意匠登録出願Aを行ったが、意匠イについては公開していなかったため、新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるための手続は行っていない。Aの出願後、意匠ロについて、その公開の1年以内に意匠イを本意匠とする関連意匠として意匠登録出願Bを行った。その際に新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるために必要な手続をすれば、出願A、出願B共に意匠登録を受けることができる場合がある。
なお、出願A、出願B以外に甲の出願はない。
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不正解:4条2項
 新規性を喪失した意匠と同一の意匠、それに類似する意匠およびそれに基づいて容易に捜索することができた意匠が出願された場合には新規性の喪失の適用を受ける必要がある。
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2 甲が単独で創作した意匠イについて意匠登録出願をした。意匠登録を受ける権利を有さない乙は、甲の了承なく、インターネット上の乙のウェブサイトに意匠イの写真を、その出願前に掲載していた。甲は、乙が公開していることを知らなかったため、意匠登録出願の際、新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるために必要な手続をしなかった。この場合であっても、意匠イについて、意匠登録を受けることができる場合がある。
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正解:4条1項
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3 意匠イについて意匠登録を受ける権利を有する甲が、展示会で、意匠イが掲載されたパンフレットを配布した。その後、甲は、別の展示会において、乙が独自に創作した意匠イと類似する意匠に係る物品が公開されていることを発見したが、そのパンフレットの配布からまだ1年を経過していないため、甲は、意匠イについて、新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるために必要な手続をして意匠登録出願をすれば、意匠登録を受けることができる。
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不正解:4条1項
 意匠イの創作者と異なる者が創作した意匠による新規性の喪失の例外は適用がない。
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4 甲は、展示会で自ら創作した意匠イを公開したところ、好評であったことから意匠登録出願Aを行った。その後、新規性がないことを理由とする拒絶理由が通知されたところ、拒絶の理由として引用されたのは、自ら公開した意匠イであった。出願Aは、意匠イの公開後3月しか経っていなかったため、甲は、新規性の喪失の例外の適用を受けることができ、その拒絶の理由に該当しない旨を意見書で主張すると共に、新規性の喪失の例外の適用を受けようとする旨を記載した書面及び証明書を提出することで、意匠登録を受けることができる。
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不正解:4条3項
 出願Aの際に新規性喪失の例外を受ける旨を記載した書面を提出していないため、新規性喪失の例外は受けられない。
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5 甲は、インターネット上の自己のウェブサイトに開発中の意匠イの写真を宣伝のために掲載したところ、20 人弱から製品化を望むコメントの書き込みがあったため、実際に製品化し、意匠登録出願することにした。このウェブサイトは、個人で作成したものであり、コメント数も 20 人弱と少ないため、意匠イに係る意匠登録出願について新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるために必要な手続をしなくても、意匠登録を受けることができる。
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不正解:4条2項
 手続きの必要性に関して、コメント数の多さは関係がない。
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趣旨
本条は、新規性の喪失の例外について規定したものである。
特許法ではこのほかにも特許を受ける権利を有する者の意に反して公知になった場合、試験によって公知になった場合にも新規性の喪失の例外を規定していたが、意匠法にそれがなかったのは広く例外事由を認めてまで意匠を保護する必要はないと考えられたためと推測される。しかし、意匠は人の目に触れればすぐに模倣される可能性があり、権利者の意に反して出願前に公知になる機会は発明の場合よりもかえって多い。また、意匠は販売、展示、見本の頒布等により売行を打診してみてはじめて一般の需要に適合するかどうかの判定が可能である場合が多いが、旧法のもとでは一度販売等を行えば新規性を喪失し、その後に出願しても拒絶されることになる。これではあまりに社会の実情に沿わない結果となるので、一項では意匠登録を受ける権利を有する者の意に反した場合、二項では意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因する場合を規定しており、二項に該当する場合三項の手続をすればなお新規性を失わないことにしたのである。
 二項では、現行法制定当初から、意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因する場合(試験、学術発表に限らず、販売、展示等を含む)も新規性喪失の例外の対象としていたのに対し、特許法及び実用新案法では、平成二三年の一部改正前までは、意に反して新規性を喪失した場合のほかは、試験、学術発表など特許法三〇条旧一項及び旧三項に列挙した事由に限定されていた。これは、発明や考案は一度公開されると社会の技術水準の一部となり、その上に技術活動が積み重ねられていくものであるため、この公開された発明や考案に後から特許、実用新案登録を与えることは、技術活動を阻害することになるから、あまり広く新規性の喪失の例外を認めることは許されないと考えられていたのに対し、意匠の場合にはそのような弊害は考えられないので、実情に適合させるために新規性の喪失の例外を拡げたことによるものである。しかし、特許法及び実用新案法においても、新規性喪失の例外の対象を限定列挙する方式では発明や考案の公開態様の多様化に十分に対応できなくなっていたことなどから、平成二三年の一部改正において、意匠法と同様に、特許又は実用新案登録を受ける権利を有する者の行為に起因する場合にまで対象を拡げることとし、これと併せて、特許又は実用新案登録を受ける権利を有する者の内外国特許庁への出願行為に起因して特許公報等に掲載されたことにより新規性を喪失した場合には新規性喪失の例外の対象とならないことを明確化した(当該改正の趣旨については、 特許法第三〇条の〔趣旨〕を参照のこと)。意匠法については、これ以前より、意匠登録を受ける権利を有する者の内外国 特許庁への出願行為に起因して特許公報等に掲載されたことにより新規性を喪失した場合には新規性喪失の例外の対象 とならないものと解釈、運用してきたところではあるが、平成二三年の一部改正によって、特許法と同様にこの点を明 確化することとした。
 三項は手続規定である。意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して公知となった意匠について新規性の喪失の例外の規定が適用されるには、まず、出願の際にその旨を記載した書面を提出し、出願の日から三〇日以内に証明書を提出することを要する。この証明書の提出期限については、本項制定当初、意匠は具体的な物品の形状、模様等であり、抽象的な発明、考案の場合よりも証明書の作成が容易であるため、特許法、実用新案法よりも短い、出願の日から一四日とされていた。しかしながら、意匠法の場合は、意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因する意匠の新規性の喪失を広く救済するものであり、産業界での本制度の利用が増加していたこともあって、短期間で証明書を作成することが容易でない場合も少なくなかった。また、出願の日から三〇日程度に期限を延長しても、特許庁における審査をほとんど支障なく運用することが可能である。このような背景から、平成一八年の一部改正において証明書の提出期限を延長する改正を行った。
 四項は、平成二六年の一部改正において追加された。特許法三〇条新設四項の規定と同趣旨により、本項を新設し、三項に規定する期間について救済規定を整備した。なお、四項を新設するに当たり、三項に略称規定を置くこととした。